
2012年7月11日(水)
今回はとてもとても重たいテーマでごめんなさい
m(_ _)m◎67
『新編・平和のための絵本 5. わたしのいもうと』松谷みよ子・文 味戸ケイコ・絵、1987年12月、偕成社、1200円
ご存知のとおり、
松谷みよ子氏は日本を代表する児童文学作家で、我が家にも彼女の作品が数冊あります。
旧ブログでも
さねとうあきら氏の話として紹介しましたが、松谷氏は、初期の代表作『
龍の子太郎』で知られるように、
斎藤隆介、
木下順二らに続く「
創作民話」の騎手として、日本の文化芸術活動を牽引した1人でした(さらにその後を引き継いだのが、さねとう氏の世代)。
その後、彼女の作品は、赤ちゃん向けの優しく楽しいものから死や戦争を扱ったものまで、実に多彩な広がりをみせます。
本書は、そのなかでも異彩を放つ作品で、松谷氏の作品を紹介するのにこれだけだとバランスを欠くようにも思われるのですが、他の作品はまた次の機会に譲るということで、ともかく本日は、こちらを。
<あらすじ>ある日、作者の『私のアンネ=フランク』という作品を読んだ、ある娘さんからの手紙が届きます。
「
わたしのいもうとの、話を聞いてください」
読みすすむうちに胸がいっぱいになり、自分一人の心にしまっておけなくなった作者は、この物語を生み出します。
* * * * *わたしと
いもうとは、7年前、ある町に引っ越してきます。
いもうとは小学4年生。
その学校で、いもうとに対する「
いじめ」が始まります。
やがて、いもうとは学校へ行かなくなります。
ごはんも食べず、
口もきかず、
いもうとは、どこかを見つめています。
かあさんが、固く結んだ唇にスープを流し込み、いもうとは一命を取り留めます。
毎日がゆっくりと流れ、
いじめた子たちは、セーラー服を来て中学校へ通います。
いもうとは部屋に閉じこもり、だまってどこかを見つめています。
そしてまた年月が経ち、
いじめた子たちは、高校生。
窓の外を笑いながら通っていきます。
いもうとは、折り紙で
鶴を折るようになりました。
かあさんも、隣の部屋で、泣きながら鶴を折ります。
「
あの子の気持ちが、わかるような気がするの」
わたしの家は、鶴の家。
野原に座り、いつしか、わたしも鶴を折ります。
ある日、いもうとは、ひっそりと死にました。
いもうとの話は、これだけ。
<感想など>絵は
味戸ケイコ氏。
やさしく美しく、暗く悲しい。
研ぎすまされた言葉たちと相まって、読んでいて居たたまれなくなります。
この問題について、私に何か言う資格があるとは思えないのですが(でも義務はあるように思いますが)、今のところ、何も準備ができていない心のままで言うとすれば、ただ、
この本が1冊ずつ、すべての教室にあればいいのにと思います。
<おまけ1><おまけ2>本書、幼稚園児にはまだ早いだろうと思い、娘には見せなかったのですが、私の留守中に勝手に見つけて読んだらしく、(内容を知らずに)「どんなお話?」と聞いた嫁さんに対する、娘の回答…
いもうとが、いじめられるの。
とっても、かなしい おはなしなの。その話を嫁さんから聞いて、幼児に読ませてよかったのかどうかと少々悩みましたが、
読んでちゃんと受け止めた娘は、褒めてやりたい、
とは、思いました。
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