
2017年5月18日(木)
ようやく12日(金)の記事です。
スーさんこと
鈴木浩之さんが出演された、こちらの芝居を観てきました。
劇団enji『イタイ★ホテル』作・演出:谷藤太
於:吉祥寺シアター
よく覚えていないんですが、スーさんがこちらに客演されて今回が5作目だそうですが、私はそれらを全部観ているので、やはり5回目の観劇ということになります。
下北沢・OFF OFFシアターを(たぶん)ホームグラウンドにしている同劇団が、創設20周年ということで、今回は吉祥寺シアターに進出。
そのぶん、私も仕事を早めに切り上げて駆けつけました。
* * *この「イタイ」って何だろうかって話ですが、バラシてしまえば、
遺体です。
私は全然知らなかったんですが、誰かが亡くなった後、葬式まで一時的に遺体を預かってくれる施設があるんだそうです。
それが通称「
遺体ホテル」。
で、本作は、その遺体ホテルで繰り広げられる悲喜こもごもの人間群像劇になっています。
* * *ここで、もうお気づきかもしれませんが、
私、
5月3日に葬式の芝居、観てるじゃないですか。
で、6日に義父が亡くなって、7日に通夜、8日に葬式をしてきたばっかりなんです。
と思ったら、12日にまた葬式(の手前)の話ですよ。
この符合は何だろうな〜と思いつつ、本作には業界あるあるネタがたっぷり盛り込まれているので、「
そうそう、そうだった」と頷きながら観てました(笑)。
* * *細かい感想はいろいろあったんですが、もう24時もまわって眠いので、一言二言だけ。

一言目
こちらの作家さんは、毎回しっかり取材されているようで、今回もさすがの安定感&安心感。
ただ、ちょっと本筋に必要ない「あるあるネタ」を盛り込み過ぎている感があり、「2時間15分は長かったな」という印象。
やっぱり、「へ〜〜」(トリビア風)的ネタも、必要最低限のところまで捨ててこそ浮かぶ瀬もアレなんですね。

二言目(以下、ネタバレです)
とくに印象に残ったのは、主人公たる新米さんと亡くなった老女の娘との対面シーン。
この新米さんは、自分の母親の死に目に関して何か後悔するところがあるらしく、懇意になった老女に「母親にしてやれなかった分まで」尽くそうとします。
しかし、これは明らかな越権行為であって、実の娘から「母親を奪う」ような一種の暴力性を伴っているわけです。
そして、(おそらくは)それを本能的に感じ取った(であろう)実の娘は、新米さんと老女が用意したエンディング・プランを全否定するような葬儀をします。
当然だよな。と思いながら、私は観ていました。
が、その直後、娘は母(老女)の遺志を一部受け入れ、遺骨の3分の2を新米さんに委ねます。
すなわち、3分の1は母の古い恋人の眠る地に埋めるように、残る3分の1は新米さんの母親が好きだった土地で撒くようにと。
これはつまり…、

新米さんが尽くしてくれたお礼に、老女が「あなたのお母さんにしてあげられなかったことを、私の遺体(遺骨)を使ってやっていいよ」と言っているわけで、彼女の苦しみを昇華させる、いわば救済を与えているんですよね。
また、新米さんは、これによって、母親への仕打ちに関する「赦し」を得ることにもなります。

と同時に、それを娘が認めたというのは、新米さんの暴力的行動に「赦し」を与えたと同時に、娘自身も救われることになります。なぜって、もしも老女のエンディング・プランを全否定したままで終わったら、娘も新米さんと相似形の苦しみを背負うことになるからです。
で、どうしてこのシーンが心に残ったかというと、私は新米さんが己の浅はかさと暴力性についてペナルティを受け、苦い思いを抱えたまま作品が終わると予想してしたので、こんな「救い」と「赦し」が与えられるとは想像できなかったんですね。
だから、
なるほど、そう来るのか。と感心したわけです。
ただ、そうした私の問題意識からして一つ気になるのは、新米さん自身は、どんな気づきを得たのかな、ということ。
娘に責められた後、新米さんは号泣するわけですが、その際に(少なくとも)明示されるのは「老女が亡くなった悲しみ」だけなんですよね。
自身の行為の暴力性をどう評価したのか、その背後にある自身の渇望をどこまで深く理解したのか、(少なくとも)明示的には語られません。
でも、他者からの「赦し」と「救い」だけだと、内省と超克のプロセスとしては、ちょっと弱いよな〜と思うんですよね。
彼女は、何を気づき、どう成長したのか…、
いつか本人に聞いてみたいですね(笑)。
* * *そして、芝居が跳ねた後は、いつものごとく、岩井さんと呑み屋へGO

さらには、後からスーさんも顔を出してくださいました。
スーさん、ありがとうございます
m(_ _)mでもって、スーさん到着から間もない頃のテーブル上。

食べ散らかしてて、すみませんね。
それから、こちらは…

…何だっけ

食べログってのは、呑んですぐに書かないと、メニューを忘れちゃって、書けなくなるんですよね。
* * *ま、それはさておき、
スーさん、翌日も舞台だというのに、遅くまでお付き合いくださり、誠にありがとうございました
m(_ _)m