
2016年4月17日(日)
以前にも書いたかもしれませんが、娘がバレエを習ってまして、本日は姉妹関係にあるいくつかの教室の合同発表会。
昨日がリハ、今日はゲネプロ

本番ということで、もう大変

嫁さんは、娘のマネジャーをしつつ、他のママさんたちと一緒に会場の設営&運営、
私は、息子のお守り&家事手伝い。
嫁さんは、先ほど娘を起こして朝ご飯を食べさせ、これから髪の毛をお団子にしたりと準備を整え、タクシーで会場へ直行。
私は、その後に息子と朝食をとり、可燃ゴミを捨て、晩飯の準備をしてから、花束を買って息子とともに娘の応援へ。
(地元の子は爺婆から花束をもらえるそうで、「何もないと、かわいそうだから」と嫁さんの指示を受け、私から花束をプレゼントすることに
f^_^;))
それにしても、今日は風が強いなぁ。
私たちも、バスを乗り継ぐのはやめて、タクッちゃおっかな〜。
* * * * *さてさて、本題へ。
先週、ジョニーさんこと
大塚尚吾さんが出演される、こちらの舞台を観てきました。
笛井事務所『愛の眼鏡は色ガラス』原作:安部公房
演出:望月純吉(文学座)
於:座・高円寺2(高円寺)
<あらすじ>チラシより引用。
--------------------------------正気と狂気が交差する精神病院。患者はそれぞれの問題と、医者は患者と向き合っている。
その姿は一見普通の精神病院だが、実は彼らには“あるべき境”がなかった。
医者のような患者、患者のような医者、正気を演じる者、狂気を演じる者…。
まるで社会のブラックホールのような空間へ、突然全共闘の学生が入り込んできたことで彼らの常識は形を変え始める。
--------------------------------少し補足すると…、
この病院では、運営費を稼ぐために消火器を販売しているのですが、
需要を煽るために、なんと患者を使って街のあちこちに放火しています。
文字どおりのマッチポンプ。
そして、放火の現場を目撃した全共闘の学生たちが、患者を尾行して、この病院に侵入。
何をするかと思いきや、口止め料としてカンパを要求します。
これに対して医師&患者たちは、自分たちが製造している放火用の爆弾を売りつけようとし…。
暴力、カネ、理想、目的、そして愛…などなどをめぐる常軌を逸した議論のなかで、誰も彼もが混乱し、自制を失い、やがて…
という、当時の時代・社会状況に対する辛辣な風刺&皮肉に溢れた、大人の寓話といった趣です。
<感想など>原作は1973年5月に出版、同6月に初演。
安部公房スタジオの第1回公演として、同氏の演出で上演されています。
出演は、田中邦衛、仲代達矢、井川比佐志らだそうですから、いや、凄いですね。
73年といえば、
言うまでもなく、70年安保の傷跡とキナ臭さが社会のあちこちに残っていて、
71年にはニクソン・ショックもあり、日本社会を大きく動揺させました。
ちなみに、公演後の73年10月にはオイル・ショックが発生していますね。
そんな国内・国際情勢のなかで上演された作品、ということです。
安部公房氏は、そうした日本社会と向き合い、当時の時代状況・社会状況を抉り取るようにして本作を描いたのだろうと思います。
当然、観る側も同時代の空気や気分を共有していて、舞台という鏡に映った自分たち自身の姿に戦慄したのでしょう。
* * *じゃ、それから43年後の日本に生きる私たちは、この作品をどのように演じ、どのように観るのか

私たちは、どのような時代・社会に生き、共にどんな空気を吸っているのだろうか

…そういう意識って、あったのかな

この作品をどう解釈し、現代の社会とどう切り結ぼうとしていたのか

ま、有名な演出家さんだそうですから、きっと何かあったんでしょうね。
役者さんたちは…若い方が多くて仕方ないのかもしれませんが、自分の役に一所懸命すぎて、その役を包摂する作品の持つうねりや迫力、作品が対峙する社会の存在にまでは、想像力が届いていない…
ちょっとキツい言い方で申し訳ありませんが、そんな感じでした。
* * *とりあえず、あの、まったりテンポがよくなかったんじゃないかなぁ。
序盤から中盤は適度なup&downをつけつつ、軽妙にして滑稽に。
社会の常識と非常識を一緒くたにして、笑い飛ばすように。
そして終盤は、破滅的で不条理なクライマックスに向かって一気に加速&加熱

…そういう本になっていると思うんですけど、一貫して鈍重で、物語がエスカレートしていかない。
う〜ん。
たぶん、致命的なのは、舞台上に<狂気>がないことじゃないかと。
誰も、内側から<壊れて>いかない。
だから、<恐怖>が出てこない。
たとえば…ですが、
半ば閉ざされた息苦しい空間のなかで、登場人物たちが互いに影響し合い(され合い)、物語が相乗的に高まっていくというイメージを共有すれば、自分の内側の何が誰たちにどんな影響を与えるのか、自分は誰らからどんな影響を受けるのか、ということに敏感になって、もっと連鎖していけたんじゃないか、
…と、いま、振り返って思います。
* * *あ。
いえ、別に、腹が立つほど出来の悪い芝居ってわけじゃなく…、
観ているときは、どこぞの卒業公演を観るような、「あ、この役者さんは技術があるな」とか、わりと温かい気持ちでいたんですが、こうやって感想を書こうとすると…、なんか褒めるところが見つからなくって、書けば書くほど、つい、辛口になっちゃいました
f^_^;) * * *余談。
ジョニーさんとは、岩井さんの「見世物」企画でご一緒させていただいたんですが、それ以前にも何度か横浜方面での舞台を観せてもらってもいました。
若々しくて、野性味と、どこか壊れそうな狂気を含んだ、色気のある芝居をする役者さんだなと、感心していたんですよね。
…そう、この芝居、ぴったりなんですよ、彼に。
でも、その彼が、若手のバックに回って抑えの役を演じている…
そういう座組だと言えばそれまでなんですが、
そっか、彼もそういう年齢なんだなと。
私たちだけ歳をとるわけじゃないもんな。
でも、また彼の<アブナイ>芝居を観たいなと思いました。