
2012年3月9日(金)
たとえ三日坊主でも、最低3回は続けなければなりません。
というわけで(

)、おすすめ絵本 第3弾はこちら。
◯14『
おうじょさまとなかまたち』文と絵/アローナ・フランケル 訳/もたいなつう(母袋夏生)、2008年6月20日、鈴木(すずき)出版、本体1,400円(A Story of Princess, Elephant, Horse, Dog, Cat, Hedgehog, Bird, Bee and Caterpillar, by Alona Frankel, 2007)
<あらすじ>むかしむかし、丘の上の小さな国に
心のやさしい かしこい おうじょさまが住んでいました。
友達は、ハチに トリに ハリネズミ、ネコに イヌに ウマに ゾウ。
みんないっしょに 気持ちのよい毎日を ゆったり 過ごしておりませした。
ある日、腹ぺこで食いしん坊のイモムシが 門の隙間から入り込んできました。
このイモムシは、誰かにいじめられると お腹いっぱいになって大きくなるのでした。

イモムシが這って行くと、ハチに会いました。
イモムシがぱっと口を開けてハチを脅すと、ハチはびっくりしてイモムシを刺しました。
イモムシは大満足。大きくなりました。

次に、イモムシは、トリに会いました。
イモムシがトリをからかうと、トリはイモムシを突ついて、飛んでいきました。
イモムシは、ぐんと大きくなりました。

続いてハリネズミ、その次はネコ、…イヌ、…ウマ、…ゾウに会ったときには、イモムシもゾウくらいに大きくなっていました。

そして最後に、イモムシはおうじょさまと出会いました。
おうじょさまは、ちっとも慌てずに、
「もう いいでしょ」と言って、イモムシを見つめました。
すると、イモムシはどんどん どんどん 小さくなって、もとの小さなイモムシに戻りました。
<感想>なんて不思議なお話でしょう。
かつ、すごいメッセージだと思います。

たとえば、小さな海を隔てた向こう岸に、1つの国…そうですね、「夜の国」とでも呼びましょうか…があったとします。
夜の国は、私たちの国に向けてミサイルを配備しています。
あるときは、実験のために海にミサイルを落として、私たちを驚かせます。
私たちは、怒って夜の国に「制裁」を加えます。
またあるときは、核兵器を作るためのプルトニウムを蓄積して、私たちを驚かせます。
私たちは、怒って夜の国に「制裁」を加えます。さらにあるときは、とある島を攻撃して、私たちを驚かせます。
私たちは、怒って夜の国に「制裁」を加えます。私たちが夜の国を怖がったり嫌ったりすればするほど、夜の国はますます暴力的・攻撃的になっていきます。
さて、ここで、私たちは、おうじょさまのように
「もう、いいでしょ」と、凛として夜の国を静かに見つめることができるでしょうか?
…私には、とても、できる気がしません。
代わりに私は、第2次世界大戦直前におけるイギリスの対ドイツ宥和政策の失敗を挙げるでしょう。
あるいは、ゲーム理論を持ち出して、「協力的行動には協力的対応を、非協力的行動には非協力対応(しっぺ返し)を。これが最強です」などと言って、もっともらしい顔をするかもしれません。
しかし、いずれにせよ、それは、「腹が立つから、懲らしめたい」という私の欲求を正当化しようとするものでしかありません(これ、内緒ですけど)。
* * * * *
なお、この話には、続きがあります。

小さくなったイモムシは、門の隙間に戻ると、さなぎになり、2週間経って、
チョウチョになりました。
美しい
チョウチョは、丘の上に戻ると、おうじょさまの髪に止まり、おうじょさまを美しく飾りました。
そして、おうじょさまのなかまたちとともに、気持ちのいい毎日を のんびり 過ごしましたとさ。
私たちは、夜の国に、そんなことを期待できるでしょうか?
なぜ、作者はこんな物語を作ることができたのでしょうか?
<訳者あとがき>には、この作者がポーランド生まれのユダヤ人で、幼い日にホロコーストを経験し、12歳でイスラエルに移住したという経歴が紹介されています。
私は、この絵本を娘のために読んでやりたいと思います。
しかし、娘とどれくらい真剣に話ができるか、まったく自信がありません。
ただ、ふがいない父親にもかかわらず、娘がこの物語を(大人になって、自分で答えを見つけ出せるまで)覚えてくれていたらな、と思います。