
2016年4月25日(月)
いやぁ、おすすめ絵本も93冊目を迎え、読書リストの絵本も920冊を超えました。
そろそろ、どんなストーリーにするか、腹を決めないといけませんねぇ。
今回は、「私も、こんな温かい物語を作ってみたいなぁ」と思える作品をご紹介。
◎919
『ろくべえまってろよ』灰谷健次郎/作 長新太/絵、1975年8月1日、文研出版、1300円
<あらすじ>大変です。ろくべえが穴に落ちてしまいました。
見つけたのは、1年生のえいじくんたちです。
穴の奥は真っ暗ですが、「わんわん」と鳴き声が聞こえます。
懐中電灯で照らすと、深い穴の底で、ろくべえがぐったりしています。
どうしよう…
上級生のお兄ちゃんお姉ちゃんは、まだ学校です。
お父さんは会社です。
えいじくんたちは、お母さんを呼んできました。
でも、お母さんたちは、わいわいがやがや騒ぐばかりで何もしません。
「これは、男でないと」と言って、わいわいがやがやと帰っていきました。
そこで、
えいじくんたちは、知らないおじさんを連れてきました。
おじさんは、穴を覗き込むと、「これが人間やったら、えらいこっちゃ」と言っただけで、去って行きました。
どうしよう…
えいじくんたちは、頭が痛くなるくらい考えました。
「そうや、クッキーを連れてこよう

」
クッキーは、お菓子じゃなくって、ろくべえのガールフレンドです。
えいじくんたちは、カゴにクッキーを乗せると、紐を結んで穴の中にそろりそろりと降ろしました。
クッキーが大好きなろくべえは、大喜びでカゴに飛び乗るでしょう。
そこを持ち上げれば…。
が、穴の底に着くや否や、クッキーがろくべえ目がけてカゴから飛び降りてしまいました

2匹は穴の底でじゃれあっています。
なんということっ

嗚呼、危うし、ろくべえとクッキー

えいじくんたちは、2匹を助け出すことができるでしょうかっ
<感想など>子どもたちの優しさと粘り強さが、大人たちの無関心・無責任さと対比されるかたちで強調されています。
長新太氏の描く絵は暗い色調なのですが、そんなストーリー展開と相俟って、どこかユーモラス。
そして、上記のクライマックスから、ここに書かなかったエンディングにかけては、思わず吹き出しつつも、一瞬で状況を反転させる灰谷氏の手際に感心してしまいます。
また、それを表現するように、長氏の描く絵も一気に明るくなります。
見事なコラボレーション。
シニカルさや滑稽さをまぶしつつ、読後には子どもたちの力強い優しさが残ります。
こういうのを、名作と呼ぶのだな、と思いました。
ちなみに、灰谷氏は、これが絵本での処女作だそうです。